税金オンブズマンの35年間を振り返って

情報ライブラリ

1 税金オンブズマンの誕生

 1990年9月,税金オンブズマンは誕生しました。今年で35年目となります。そのきっかけとなった出来事は,ある同和関係団体の幹部Оが,自分の顧客の税務申告に関してわざと不適切な申告をして税務調査を受けさせて顧客に対する多額の脱税指南をさせたことが発端となっています。
 その過程でОは大阪国税局幹部数名に対して合計で1億円近く使って接待を行いつつ,2名の幹部に対しては約2000万円近い金銭を渡していたことが発覚し新聞で報ぜられることとなりました。
 これに怒った関西地域に在任する弁護士,税理士や中小の事業者と市民が,ゆがめられた税務行政をただすべく,Оから現金をもらった大阪国税局幹部2名を贈収賄容疑で大阪地検に告発すると共に,同時に税務行政をただすことを目的として税金オンブズマンを結成して,ひろく市民にゆがめられた大阪国税局の同和行政の是正を求めて「税務署をマルサせよ」という書籍を発行して,広く啓蒙活動をしております。
 ところでОは贈収賄では不起訴となったものの「非税理士の税務代理行為を禁ずる税理士法52条違反」で起訴され,この事件でОを弁護したのが元大阪地検特捜部の検事であった田中森一弁護士でした。彼は特捜部の弱点をついてОと2人の幹部の贈収賄を不起訴に持ち込んだのです。

2 税金オンブズマンの活動内容

 さて税金オンブズマンの活動目的は,税務署や税に苦しめられている納税者を支援したり,税の使い道をただす運動や,広く出版活動を通じて,啓蒙活動をすることを目的としています。この間税金オンブズマンが納税者を全面的に支援してきた裁判は以下のとおり合計で4件あります。

  1. 最初は,固定資産税国家賠償事件です。この事件は,平成6年の評価替えの是非を争う事件で,それは平成4年1月に元自治省の事務次官によって出された依命通達で,「固定資産の評価は,当分の間時価の7割とする」旨の評価方法の変更によって全国平均で評価が4倍化し,その結果大幅な増税となったことの違法性を争う事件です。この事件の内容を,「税の民主化を求めて」という題で出版しています。
  2. 次は外資系会社で働く社員に支給されたストックアワード(ストックオプションに似た親会社の株を取得できる権利で,取得金額の定めのないものです)の課税処分をめぐる事件です。この権利は,何らの意思表示をすることなく権利を行使できる時に親会社株を取得したものとして取り扱われ,その後株が暴落したにも拘らず多額の課税処分を受けて争いとなりました。
  3. 三番目は,不動産バブルの最高時(平成3年)に相続した納税者があまりに高い相続税が支払えないために相続不動産を物納申請したところ,大阪国税局はそれを14年半も放置し,さらに法律の規定とは違う取り扱いをして,低い評価でしか収納しなかったため,その取消を求めた事件です。これは,「裁判所は国税局の手先か」という題で大阪国税局の処分を追認した裁判所のひどい判断をひろく世間に内容を知ってもらうために出版しています。
  4. 最後は外国船内でのみやげ物販売事件です。日本の港に停泊中の外国船乗務員に日本の業者がみやげ品を船内に持ち込み販売していたところ,それは「日本国内での販売」と同じであるとして,消費税を課す処分をしたことを争う事件です。本来,外国船のフラッグのある船内では,日本法の適用外とすべきこと(旗国主義といいます)を争ったものです。

 いずれも納税者に何らの問題はないにも拘らず,不当な課税処分を受けたことを争ったものですが,いずれも勝訴できませんでした。でも 1. と 3. では,国に立法的な解決を図るところまで追い込んでいます。

3 最近の活動

(1)住民訴訟の支援

 大阪市がIR事業(カジノ)を展開する企業に対し,不当に安い価格で土地を賃貸する契約を結ぶことに対し,大阪の土地(舞洲)をIRの事業体に貸し付けることの不当性を争った大阪市民による住民訴訟を支援しています。
 それは,本来カジノ営業のために大阪市の所有する土地を不当に安く利用させることについては批判も多く,税金オンブズマンとすればカジノの事業を営むことについては広く大阪市民・大阪府民の意思を確認すべきであり,住民投票にかけるべきであると考えているからです。大阪府議会と大阪市議会はいずれも住民投票に反対する政党が多数派であるために,市民・府民の多くの反対の声を無視してIR事業の推進を図っているようです。

(2)税金なんでも相談の開催

 毎年2月の第3土曜日の10時から3時まで確定申告時期に合わせて,プロボノセンターで無料の相談活動をしています。相談を受けるのは,オンブズマンのメンバーの税理士と弁護士が担当しています。
しかし,最近は少々マンネリ化してきたせいか相談件数が減少しています。もう少し工夫をしてこの相談活動の周知を図るための方策を考えています。

4 今後の方向について

 税金オンブズマンは今年で35年間も頑張ってきていますが,初代の代表委員であった福西幸夫税理士が亡くなり,2代目の代表委員を弁護士関戸一考が受け継いでいます。目下,各々委員のメンバーの若返りによる交代を図りつつ,新しい活動を模索している状況です。
 近時ホームページを作り替え,その活動内容を広く訴えて多くの市民にアピールすることを新たに検討している状況にあります。
 税金オンブズマンは,税の使い道をただす活動をしながら,税務署に苦しめられている市民・納税者の代理人として,これからも頑張っていきますので皆様の支援をお願いいたします。

2024年3月 税金オンブズマン代表委員 弁護士 関戸一考

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